悪循環を断ち切ることの大切さ

セラピーを受けて良いことの一つは、自分が知らず知らずのうちにやってしまっている悪い癖、のようなものに気が付けるということだと思います。そういった癖はわかりやすいものばかりではなく、そもそも悪循環に陥ってしまっていたことさえ気付かなかった、という場合も多いです。

例えば、恋人と上手くいかない、という理由でセラピーやカウンセリングを受けようと思った人がいるとします。もともとの理由がそれでも、セラピーを受けているうちに、自分がいつも、どのような人間関係でも、そういったパターンに陥っていることに気が付く。つまり、最初は相手のせいだと思っていた問題も、実は自分が原因を作っていたのだった - などということがありますが、そのように、深いところで悪循環に陥っていた人を、今まで数多く見てきました。が実は、一度そういった、隠れたところにあるパターンに気が付くと、後は意外と早く解決に向かうことが多いです。解決するべき本質的な問題がわかれば、当然、人間は自然とそこを正す方向に行こうとするからです。

ただ、その「気付き」はすぐには生まれません。なぜかというと、ネガティブなパターンが、あまりに自然な流れ(つまり癖のようなもの)になって、自分の生活の中に組み込まれてしまっているので、気が付かないのです。多くの場合、それが一見、そこまで悪いことのようにも見えません。例えば、自分の親にかまってもらえなかった、もしくはしつけが厳しく虐待のようなことをされたから、自分は子供を優しく育てたい、と信じている人がいたとして、常に子供を問題から救い出したり、問題を回避させたりしているとします。これは、子供が小さいうちは、周りからも「子供思いの親だ」と思われたりして、むしろ良いこととして捉えられたりするかもしれません。ただ、それをいつまでも続けていくと、子供自身の問題解決能力が育ちません。そうして何十年も経って、子供が大人になってからそのつけが回ってきて、その子が原因で家族全体に大きな問題が降りかかる、ということなどがあります。こういった場合、根本の原因は何かと突き詰めていくと、奥底になかなか見えにくいタイプのネガティブなパターンが隠れていた、ということになります。

自分が悪循環に陥っていることに気が付かないもう一つの理由は、自分の心の中にメンタルブロックがかかっている場合があるからです。そういう時は、もしセラピストや親しい人物に悪い癖を指摘されても、最初は、自分の本質的な問題を否定したくなります。もちろん、誰だって初めは、自分の犯している過ちを認めたくないという気持ちになりますし、そんな訳はない、と思ったりします。上記の親の例でも、子育て中に「過保護じゃないか?」とか、「子供をコントロールしようとし過ぎじゃないか?」などと指摘されたとしても、恐らくそのパターンに入り込んでしまっている人は、他人の意見を跳ねのけるでしょう。

では、そのようなメンタルブロックは、どうして生まれるのでしょうか。それは、なぜ人間はそのようなネガティブなパターン、つまり悪循環に陥るか、という原因自体にも一因があります。多くのネガティブなパターンは、何かを避けるという目的で始まっています。例えば、人と言い合うことを避けたい、人の怒る顔や悲しがる顔を見たくない、自分に弱い部分や苦手なものがあることを認めたくない、等です。ということは、過去にそういったことが原因で起きた何らかの酷い出来事があり、そのネガティブな体験によって嫌な思いをした、という事実があったということです。そこまで分かったら、大方、問題の本質が見えてきます。つまり、根本的な問題は、自分自身がその過去の出来事を解決できていない、ということなのです。それは自分が、嫌な記憶や不都合な事実に向き合いたくない、と避けてきたからだと言えます。要するに、それがメンタルブロックです。

これでおわかり頂けたと思いますが、過去の嫌な出来事(トラウマ)は、今の自分の問題に一見関係ないように見えて、非常に強い関わりがある時が多々あります。過去のトラウマによる傷がまだ癒えていないと、人間はそれと似たような経験をすることを無意識に避けようとします。つまり、ささいな出来事に対して過剰反応を起こしてしまうのです。やっかいなのは、それによって、様々な別の種類の問題を自分の手で生み出してしまっているかもしれない、ということです。一度そうなってしまうと複雑で、根本に隠れている原因が非常に見えにくくなります。ですので、できればそうなる前に、自分にはネガティブなパターンがあるか、何らかの悪循環に陥っていないかを、今一度深く見つめ直してみることをお勧めします。