日本のアニメはなぜ世界で人気があるか

今回は、少し違った角度から人間の心理を見ていきたいと思い、このトピックを選びました。日々の生活の中で辛いことがあったりすると、ぼんやりと映画を観ていたくなったりしますよね。現実逃避と言われればそれまでですが、人間、そういう時間も必要です。そして、特にそういった時に観るものとして日本のアニメはぴったりだと思いますし、そのように感じているのはどうやら日本人だけではないようです。筆者が現在住んでいるアメリカでも、日本のアニメの人気がとても高いことをよく感じます。ゲームから日本文化やアニメのキャラクターを知る人も多いのですが、アニメや漫画自体も人気です。

さて、その人気の理由として、個人的な感想も入っているのですが、私は下記の三つが大きいのではないかと思います。

1.心理描写の細かさ

日本の漫画は、本当によくストーリーが作り込まれていることに加え、登場人物一人ひとりの考えていることが、とても細やかに描かれていると感じます。

日本人は、世界の中でも、会話中のアウトプットが少ない民族であると思います。つまり、会話の中で思ったことを全て口に出すのではなく、ある程度は想像に任せる、もしくは相手の想像に任せてもらう。そういうことが自然に行われていて、それを支えている文化が日本にはあるのではないかということです。それは、日本が比較的小さい島国であり、住んでいる人たち皆で共通理解を持つのが容易い方であるから、というのが恐らく一つの理由ではないかと思います。もう一つは、文化的に、相手を傷つけたり恥をかかせたりしないようにとても気を遣うところがあるので、あまりはっきりものを言わない、というところ。もしかすると、これも小さな島国の中で協力して生きていかなければならないので、できるだけ揉め事を起こさないようにといった雰囲気の中から生まれたものかもしれません。この私の推測が合っているか間違っているかはわかりませんが、日本人の会話中のアウトプットの少なさは、この二つの理由から段々と作られてきた風習であるのかなあ、という気がします。外国に行ってみると、確かにそういった風潮を目にするのはなかなか珍しい、ということに気付く人は多いでしょう。それはつまり、世界の中では、思ったことをすぐに口にする文化の方が断然多い、という意味です。

とにかく、上記で述べたような文化背景があって、声で表すのではなく、心の中で色々と考えることが多いのが日本人の特色の一つであるとすれば、その特徴が色濃く出ているのが漫画、小説、または映画などのストーリーではないでしょうか。もちろん、世界中どのスト―リーにも心理描写はあるでしょう。ただ、外国で作られる話の中には、日本の作品ほど細かな心理描写はあまりないのではないでしょうか。特に、子供向けの話である漫画において、そこまで細かい心の機微が描かれているものは?と考えると、確かに少ないような気がします。

2.キャラクターが多様である(なぜか日本人っぽくない)ところ

漫画ファンであればわかると思うのですが、日本の漫画に出てくる登場人物の人種は、特定がしにくいという傾向にあると思います。ポケモンなどはそもそも人間でさえないので、実際人種は関係ないですが、登場人物が主に人間である場合でもそういった場合が多いと思います。例えば、最近Netflixで実写化されたことが話題のワンピースの主人公は、アジア系でない役者さんが演じています。その他の登場人物も、髪の毛の色が様々であったり、顔の作りも、アジア人のそれとは思えないようなものが多いことが特徴です。そしてワンピースに限らず、日本の漫画には、こういった傾向が強いものが多いと思います。筆者も昔から色んな漫画を読んできましたが、なぜ登場人物が外国人のような顔をしているのかを疑問に思ったことはあります。

もちろんそこには、日本人自身の、欧米的な容姿を称賛するような、人種差別的な考え方がある可能性も否定できません。ただ、漫画の海外進出に伴って、このことは吉と出たようです。世界中多くの人々が、登場人物を自分のことのように思うことができたからです。これは、作者たちも意図しておらず、結果そのようになった、というだけかもしれませんが。

3.音楽の良さ

これに関しては、漫画のみの場合には当てはまらないので、主に映像化された漫画やアニメ映画の人気についての理由になりますが、数々の日本のアニメ映画やアニメシリーズがヒットした背景には、素晴らしい音楽家とのコラボレーションがあったことが大きかったのではないかと思います。ジブリ映画の成功にも見られるように、質の良い音楽がストーリーにマッチしていると、アニメの良さはより一層引き立ちます。人気のアニメ映画が出てくる度に、製作者側はそのことを本当によく知っているのだな、と思わされます。

もちろん同じことは、アメリカのディズニー映画に関しても言えます。成功した映画がミュージカル化されたり、使用された歌がヒットしたりするのは、よくある現象でしょう。でもアメリカでは、有名な映画以外のアニメでそのようなことが起こっているのはあまり見ない気がします。日本では、映画化されていない、テレビのみで放送されているようなアニメでも、オープニングやエンディングの曲がヒットしたりします。これは、日本人の中で、音楽というものが生活により直結しており、音楽もストーリーの一部として考える精神があるからかもしれません。EMDRセラピーをしている中でも、記憶の中から音楽が出てきたりすることは多いし、自分を勇気づけるものとして音楽を挙げる人も少なくありません。ですので一般的にも、音楽と、特に良い思い出との結びきは強い、と言えると思います。例えば、主題歌を聴くだけで、そのアニメの主人公の勇気ある姿を思い出して励まされる、といったようなこともよくあるのではないでしょうか。

これからも、日本からもっともっと素晴らしいストーリーたちが生まれ続けていき、世界中の人々の心を動かしていくことを願って止みません。