日本は本当に「安全」な国か

多くの方がご存じの通り、アメリカでは日々銃による被害が出ています。最近、やっと政治的にも銃規制に関する具体的な動きが出てきたようですが、ここまで来るだけでも大変長い時間がかかりました。その点、日本は銃規制が厳しいこともあり、アメリカと全く同じ問題はありません。時々、ナイフやその他の凶器による事件は起こるものの、比較的小さな出来事でも大きなニュースになるほどですので、まだまだそういった事件は珍しいということができるでしょう。これは、それぞれの国が歩んだ歴史や、地理的な環境、また文化が違うことが理由に挙げられると思います。

しかし、そのように、一見「安全」と思われがちな日本でまだまだ注目が集まっていない、もしくは見過ごされているのが性的な攻撃(犯罪)です。日本は男性優位な社会ですので、その多くが男性から女性によるものですが、中には男性や男の子に対する性的な事件も、少なからず含まれているはずです(男性優位な社会であるからこそ、被害者が声を上げにくいということもあります)。前回、ドメスティックバイオレンス(DV)について書きましたが、DVと性的虐待は重なっている部分も多いです。今回、はっきりしたイメージを持って頂くために、性的な攻撃(犯罪)の種類を挙げてみました。

  1. 痴漢
  2. セクハラ
  3. ストーカー
  4. デートレイプ(知人や恋人による、一見気付かれにくい性的嫌がらせやレイプ)
  5. レイプ(見知らぬ人物によるもの)
  6. 近親相姦
  7. 性的虐待(6. と重なる部分もありますが、主に加害者が家族以外の場合)

こうやって挙げてみると、性的な攻撃(犯罪)には非常に多くの種類があります。まず日本では、痴漢が性的な犯罪として捉えられない風潮もまだあるかと思いますが、これは立派な犯罪です。しかも、悲しいことに、こういった認識の甘さとは裏腹に、痴漢の犯罪率は非常に高いと思われます。また、未成年が被害に遭うことも多いのは、悲しいことです。近親相姦や性的虐待の被害は、被害者が声を上げづらいため、表に出にくいということは多々あります。そういったことをふまえて今一度考えてみて下さい。あなた自身、もしくはあなたの周りの女性の中で、上記の被害のどれかに遭ったことがある人は、何%くらいいるでしょうか。私の場合は、ほぼ100%です。そして、恐らく、多くの人の答えが同じだと予想します。これは、驚異的な数字ではないでしょうか。

ここで、日本の状況をはっきりイメージするために、もう一度アメリカの数字と比べてみましょう。アメリカでの様々な統計によると、人生の中で何らかの性被害に遭う女性の割合は、約80%と言われています(https://www.nsvrc.org/statisticsより)。レイプのみを対象とした統計では3人に1人という結果も出ていますし、どの年齢の女性を対象にするかでもまた変わってきますので、この統計は大まかな数字です。80%でも高い数字ですが、それでも100%ではありません。

いやいや、アメリカは危険な国だから当たり前でも、日本は安全な国だから、性被害に遭う確率がそんなに高い訳がない。そう思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、両方の国にそれぞれ20年ほど住んだことのある女性である筆者の個人的意見は、「その数字は当たっている」であり、その感覚は実感としてあります。恐らく、理由の大きな一つは、アメリカは車社会であるというところでしょう。日本は公共の交通機関が発達しており、よっぽど地方でない限り、バスや電車で移動できます。それは便利で良いことですが、その分危険も伴います。最近では女性車両も出てきて、少しは安全な世の中になったと思いますが、そもそもなぜ女性車両が必要なのでしょうか?そのこと自体を、考えてみて下さい(ちなみに、筆者が知る限り、アメリカには女性車両は存在しません)。また、通勤などで電車が混んでいる時は、女性車両が使えないこともあると思います。さらに、夜遅くに駅から自宅まで徒歩で帰らなければいけない女性も多いと思いますし、多くの子供たち(小学生や中学生)も、学校までの登下校は大体徒歩です。一見、安全だからこういったことが行われていると錯覚しがちですし、筆者もアメリカに来たばかりの頃は、親がどこへ行くにも子供を車で送迎しなければならないのは大変だと思いました。しかし、今は、日本でもその必要性が出てきたのではないかと懸念しています。というのも、日本で通学途中に襲われ、性的被害に遭ったという過去を持つという人々が、かなりの割合でいるということを知ったからです。こういった被害者たちは、長い間声を上げられないことが多いです。幸いにも誰かが気付いてくれたり、声をあげられた人たちの統計は、以下を参考にして下さい(https://www.npa.go.jp/hakusyo/r03/honbun/html/x2213000.html警察庁の統計より)。ただ、こういった統計は氷山の一角で、実際にはもっと多くの被害者がいると思った方がいいです。

もう一つの側面は、多くの性的な被害は、自分の知っている人物から受けることが多いというところです。上記のリストに戻って頂くと、1と5以外はすべて、知人や友人、同僚、パートナー、家族、また少なくとも顔見知りである人物からの被害であることがわかって頂けるでしょう。これに関してはどの国でも同じ状況であると思いますが、性的な攻撃の加害者は、必ずしも見ず知らずの人物ということはありません。むしろ、多くの加害者が、被害者よりも年上であったり上司であったりと、金銭的、社会的に被害者をコントロールできる立場にあり、そういった立場を利用して性的な攻撃が行われることがほとんどなのです。

これから若い人たちが育っていく日本という国を考える時、こういったことを頭に入れながら、間違った認識を払拭し、変えていかなければならないところは変えていかなければいけないと思います。そうでなければ、本当の意味で、日本は「安全」だとは言えないと思っています。アメリカにも銃の問題など山積みですが、日本にも、まだ多くの人間が直面する勇気のない「影」の部分は多いと思います。そう、こういった問題をなかったことにしたり、目をつぶっていては、何も解決しないのです。