生かすも、殺すも、親次第

この仕事をしていて、日々、子育てが人の人生にどれだけ影響するかを実感しています。子育て、と一言で言っても、その中には親の性格、子供の教育の仕方、親同士の関係性など、色々な要素が含まれています。今回は、この3つの要素について見ていこうと思います。

1.親の性格

家族といっても、合う、合わないはあります。同じ親から生まれた兄妹姉妹の中にも、親と特に近い関係である人と、そうでない人に分かれてきたりするのは普通のことです。この事実はあまり取り沙汰されることはありませんが、これは考えてみれば当たり前のことで、どの職場でも、必ず気が合う人や合わない人がいるのと一緒です。ですから、気が合わない母親や父親の元に生まれてしまう場合も多々あると思います。それは誰のせいというわけではないことも多いので、それぞれにとっての「適度な距離」を把握することが大切ではないでしょうか。

2.子供の教育の仕方

これが、一般的によく取り沙汰されている子育てというものかもしれません。特に、世間には子育て=どれだけ学力を子供の頭に詰め込められるか、だと思っている人が多いと思います。けれども、多くのことを詰め込めば詰め込むほど良い、ということはないはずです。学問の知識が多く入った分、失われるものも多いような気がします。例えば、自活する能力。これは、勉強だけしていても当然身につきません。また、社会的スキル。つまり、人間関係をどれだけ上手く扱うことができるか、です。社会に出れば、学校とは違ったスキルが要求されます。ですから、勉強ばかりしているよりも、上に挙げたような自活能力や社会的スキルを身につけておくことの方が、長い人生大切になってくるのではないかと思います。人間、好きなことの勉強は、自然と自ずからするものだからです。

例えば引きこもりになってしまう子供というのは、上の良い例とは正反対で、学力はあっても自活能力や社会的スキルがない人が大半ではないかと思います。残念なことに、日本に引きこもりの人数が多いのは、学力だけを子供に詰め込もうとした親が多かったせいではないかと考えます。その親たちは恐らく、自活能力や社会的スキルなどというのは、教えなくとも身につくものだ、と思っていたのではないでしょうか。それは、必ずしも正しくはありません。そういった力は経験から身についてくるものなので、勉強や習い事ばかりさせていたのでは、なかなか普通の人間関係を育む時間や、料理や掃除をする、などの時間がとれないと思います。これらは本当に基本的なことなので、昔の子供は皆やっていたことかもしれませんが、今の子供は忙しい。ですので、親は自ら工夫して、子供にこういったことをやらせる時間を作らなければならないのです。たとえ子供が勉強の知識をたくさん吸収して、親が思う「良い大学」に入ったとしても、自活能力や社会性がなければ、何もかも無駄になってくるのですから。

ただ、単純に勉強をそれほどしないでいいとか、子供のやりたいことを何でもかんでもやらせる、というのが良い教育だと言っている訳ではありません。上記のように「コントロールしたがる親」の正反対のベクトルの先にいるのが、「全く何もしない親」つまりは無意識に教育を放棄している「甘やかし過ぎる親」に当たります。親は、子供に良いこと、悪いことの分別を教える義務があります。それを忘れて、意識的にしろ無意識的にしろ子供を甘やかし過ぎるのは、非常に危険です。子供が誰かに暴力を振るってしまったり、嘘をついたり、礼儀を守らなかったりした場合は、きちんと叱れる、つまり教育できる親でないと、親の義務を果たしているとは言えないでしょう。ただ、物事の良し悪しを教える、というところをはき違え、子供に自分の理想を押し付ける、というか叩き込もうとする、というのは間違いで、それではコントロールし過ぎる親になってしまいます。これは教育虐待のテーマでブログを書いた時にも少し触れましたが、物事の分別を教えると言っても、程度があります。子供に暴力をふるってまで教えても、暴力を振るうこと自体がそもそも悪いことであるし、「良いこと」を教えるはずの親が暴力を使ってしまうと、教えている事とやっている事との間に矛盾があるので、子供は混乱してしまいます。

じゃあどうしたらいいんだ、ということになりますが、下記のようなバランスの取れた感じが理想でしょうか。例えば自分の子供が勉強が嫌いでも、次のテストまでに頑張ってみよう、と何かと工夫しながらやる気を出させたり、子供と一緒に考えながら人生を進めていく。それでも、子供がどうしてもやりたくない何かにぶつかる時もあると思います。そうなればそうなったで、方向性を変えることを考慮してみる。子供に理由を聞きつつ、一緒に相談してどうするかを決めて行く。間違ってもいいよ、とりあえずやってみたら?という態度を保ちながら。決して強制するのでもなく、甘やかすのでもなく。完璧な親とかそうでない親とかいうよりも、厳しすぎず、ゆるすぎず、その真ん中に何とか留まってさえいれば、良い子育てなのではないかと私は思います。さらに、学業とかスポーツとかだけに偏りすぎず、子供が生きていく上で必要な様々なスキルをバランスよく教えていければ、尚いいかと思われます。

3.親同士の関係性

例え一緒に暮らしていなくとも、どんな子供にも親は二人存在します。その二人がどんな関係であるか、またはどんな関係であったか、というのは非常に重要です。もちろん、その二人の関係が良いほどいいです。というのも、親二人の関係性というものは、子供の人生に物凄く影響するからです。例えば親同士がいつも喧嘩しているのを見ながら育った子供は、そういった関係のイメージが自分の脳の中で固まってしまい、なかなか人と平和的な関係を築くことができなくなったりします。平和的な関係といっても、そもそもそのイメージが無いので、難しいのは当たり前でしょう。そういった場合は、できるだけ早くにそういった家族から抜け出て、自分に合った人を探し出し、心が平和に過ごせる場所を見つけることが大切です。そのためにも、まず、2.で言った自活力が必要になってくる訳です。親が一人しかいない場合も、もう一人の親はどうして存在しないのか、という部分の情報を知っていることは大切ではないかと思います。中には、父親、もしくは母親について全く知らされていない、という場合もあるでしょう。これは暗に、両親が不仲であったとか、何らかの問題があったことを示唆しており、残念ながら、子供の人生に影響してしまうと思います。過去に色々あったとしても、そういった事情をオープンに話せる家庭の方が、子供の精神上やりやすいのではないかと思います。子供というものは、言葉だけでなく、家庭の「空気感」からも本当に色々なものを悟る生き物ですから。これは一般的にですが、やはり秘密のある家庭よりも、正直に何でも話せる風通しの良い家庭の方が、問題は少ないような気がします。

また親同士の関係が悪いと、そこで既に自分の社会的スキルにヒビが入ることになります。もちろん、社会性や社会的スキルというものは、自力で学んで身につけていくことが可能です。ただ、おそらくそれは、親以外から学ばなければならないでしょう。多くの場合、お互い良い関係が築けないタイプの親たちには、もともと社会性が身についていなかったり精神的な問題があったりするので、子供に社会的スキルを教えるどころか、そのような余裕が全くない場合も多いと思います。それでも、社会で上手くやっていくためには、周りと平和な関係を築くことが必須です。が、親たちが平和的でポジティブな関係のモデルではないし、安心して信頼し合える関係とはどういうものか、などを教えてもらうことも期待できない場合は、やはり親以外の人たちから良い関係を学ぶしかありません。中には、親戚中皆けんかしていることもあるかと思います。そういった場合こそ血縁というものから離れ、少しでも平和的関係を築ける場所に、自ら移動してほしいと思います。

今回は、親(もしくは生まれ育った家族)がどれほど子供の人生に影響を与えるか、それはなぜか、またどのようにすれば少しでも良い影響を与えられるかについてのヒントを、子育てというテーマに沿って書いてみました。少しでも参考になれば幸いです。