たまにふと、どうしてこの世界はこんなに不公平であるのかと思うことがあります。私のように、日々、色々な方の過去の嫌な出来事やトラウマに接していると、否が応でもそう感じてしまうのかもしれませんが。
例えば、両親が不仲な家に生まれた子供たち、両親のどちらかまたは両方がひどい病気を持っていたり、暴力的である場合、戦争が起こっている地域に生まれた人々、もしくはものすごく貧しい国や地域、家に生まれたため、やりたいこともできない状況…。こういった様々な逆境に人類は立ち向かえるのだろうか?一つ考え始めると、どんどん考えが浮かんで、このような質問に対する答えを探し始めます。自分一人の力などたかが知れているし、助けようにも様々なやり方がありすぎて、何から始めればいいのか見当もつかず呆然としてしまう時もあります。ただ、落ち込んでいてはしょうがないし、何も変わらないとも思います。
私の仕事は、上記のような原因から心にトラウマがある人々を精神的に手助けするものです。そこで一つ思うことは、人間に精神的な助けはもちろん必要ではあると思いますが、それだけで全人類が、様々な問題が解決すると考えるのは驕りだということです。まず第一に、どんな人にとっても金銭的・物質的な安定は絶対に欠かせないものであり、困っている時に、精神的な手助けと共にそういった援助も受けることができれば一番良いと思います。時と場合によってどちらの手助けがより必要かは変わってくると思いますが、基本的には、どちらが欠けても人間はうまく機能できなります。
また、精神的な手助けにも様々なものがあり、セラピストや精神科医による手助けの他、家族や友達によるサポートも大きいという気がします。いくらセラピーをしていると言っても、所詮、1週間に1度、1時間程度話をするだけです。つまり、1日のうち23~24時間は基本的に自分一人で過ごしているのです。ですから、むしろセラピーに費やす以外の時間をどう過ごすか?ということが大事になってくる、とも言えます。
ここで私が強調したいのが、社会的なサポートの大切さについてです。上記に記した、「私に何ができるのだろうか?」という問いの答えにも繋がってくるのですが、良い友達やパートナーに恵まれると恵まれないとでは、人生は大きく変わってる、ということです。プロの力を借りずにトラウマから立ち直った人は、この世の中にたくさんいます。そういった人々の多くが、心の優しい友達、同僚、そして家族に囲まれていた、だから立ち直ることができた、私はそう思います。ですから、今自分の周りにいる友達が困っていたら、手を差し伸べる。それを、繰り返す。本当にそれだけで、世界は良くなっていく、といっても過言ではないと思います。つまり、世の中を変えるためには何か大きなことをしなければならない、という訳では決してないということです。結局、人間は自分にできることしかできないのですから。まずは、自分の周りの世界を整えることから始めてみるのはどうでしょうか?もちろん、私自身も、できる限りトライしてみます。